アブラムシが黒い?5つの種類と生態の違い!卵・成虫・繁殖【完全版】
こんにちは。
山奥の実家で20年、多くの虫と暮らしてきたアキラです。
野菜や植物などに付着する害虫、「アブラムシ」。
このアブラムシには非常に多くの種類がおり、また特殊な生態をしていることから繁殖力も凄まじいです。
今回はそんなアブラムシについて
種類や生態、たまご、幼虫、ライフサイクル
をわかりやすく説明していきましょう。
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アブラムシの5つの種類!
アブラムシは、「アブラムシ上科」の昆虫を総称した呼び名です。
日本には700種類以上が生息しており、世界中に生息する種類も少なくありません。
その中でも、一般的に良く見かける5種類のアブラムシを紹介しましょう。
全身が黄色〜薄黄緑色で、米粒のような楕円形の体型をしています。
体長は3〜4mmほどです。
影響は?
アブラナ科やナス科の野菜類に発生します。
トマトやじゃがいも、セロリなどにつくため、家庭菜園でも多く目にするアブラムシです。
1年を通して発生するためしっかり駆除したいところですが、これらの多くは外で栽培していることが多いため、野菜の苗を植えた直後から「防虫ネット」を張って、成虫がつかないように気を付ける必要があります。
他にも雑草を除草して「風通し良くすること」である程度予防することができます。
名前のとおり「桃色の個体」もいますが、
- 緑色〜黄色
- 茶褐色
- 赤褐色
など様々な体色の個体がいます。
また、体表にはツヤがあり、体長は2mm程度です。
影響は?
主に葉の裏につくアブラムシで、
- カーネーション
- パンジー
- キク
- アイリス
- ハーブ類
につく多食性の農業害虫です。
多発すると、花類にモザイク病を蔓延させます。
ウリ科やアブラナ科植物にも病気を広めるため、野菜が生育不良になる場合も多くあります。
また「脱皮した殻」で花や葉が汚れるため、見た目の被害も甚大です。
モザイク病とは?
ウィルス感染した野菜の葉・茎・花の部分に、黄色の濃淡のまだら模様が出来る病気です。
その後は、株の萎縮や葉が縮れたりなど、様々な症状が全体にあらわれます。
淡い緑色で体表にはツヤがなく、手足や触覚、頭部は黒い色をしたアブラムシです。体長は1.8mm程度。
次に紹介する「ナシノアブラムシ」と大きさや色が似ていますが、
- 葉の裏に集まるのがミカンミドリアブラムシ
- 葉の表に集まるのがナシノアブラムシ
として見分けます。
和名は「ユキヤナギアブラムシ」で、ミカンミドリアブラムシはよく使われる別名です。
影響は?
リンゴ、モモ、スモモ、ナシ、ウメ、サクラといった「果樹」や、メジャーな庭木につく他、
- イタドリ
- ミツバ
- セリ
といった「食用の野草」にもよくつきます。
名前のとおり柑橘類、ユキヤナギも好んでつきます。
果樹栽培を行う農家だけでなく、庭の観賞用の木にもつくため、世界中で甚大な被害をもたらしています。
特にナシやリンゴでは「主要害虫」とされているため、果樹園では害虫ネットによる対策が行われています。
晩秋にユキヤナギやコデマリの幹で産卵をおこない、越冬を行うアブラムシです。
梨の木によくついているアブラムシですので、梨を庭木にしたり果樹栽培がさかんな日本では、メジャーな種類と言えるでしょう。
見た目や影響は、ミカンミドリアブラムシとさほど差異はありません。
ナシノアブラムシもミカンミドリアブラムシも、他の木にも寄生しますが、
- メインに寄生する木の種類が違う(梨の木とバラ科の木)
- 越冬する木が違う
- 葉の巻き込む方向が違う(外向きか内向きか)
などが違いと言えます。
木への影響はどちらも
- 吸汁
- 新芽の浸食
- 葉の変色
が挙げられるので、差異はないでしょう。
体長は3mm前後で、淡い黄色〜白の半透明の体色を持つアブラムシです。
頭部が赤く、脚は体幹と同じように黄緑色です。
影響は?
コロニー(集団・繁殖地)は大きくありませんが、家庭で良く栽培するようなハーブ類などのシソ科植物によく寄生します。
他にもジャガイモ、ピーマン、エダマメなどにもつき、家庭菜園の大敵とされる害虫の一つです。
ジャガイモの葉にすす病を蔓延させる他、葉を枯れたように黄色く変色させ、生育不良にさせてしまいます。
苗を植えた直後は防虫ネットで防止し、徹底的に薬剤で駆除をおこなうことで対策できます。
すす病とは?
すす病は、『すす病菌』と呼ばれるカビの一種が葉に付着し繁殖することで発症する病気です。
見た目が「すすを振りかけたような状態」になるほか、カビが全体に広がると光合成を阻害するため、成長不良に陥ります。
それ以外にも色々な種類がありますが、特徴的なものとして「兵隊アブラムシ」があります。
これは、
- ヒラタアブラムシ亜科
- ワタアブラムシ亜科
に属するアブラムシのみに当てはまりますが、通常の個体以外にも兵隊アブラムシと呼ばれる「外敵を攻撃するための個体」をも生み出すのです。
兵隊アブラムシの身体は黒ですが、白い綿のようなものを身体にまとっています。
【兵隊アブラムシの例】
この兵隊アブラムシは「攻撃専門」であるため、とてもがっしりした体形で生まれ、足も太く、しっかりと天敵にしがみつきます。
口には「口針」と呼ばれる太いストローがあり、差して敵を攻撃します。
ツノで攻撃する場合もあり、世代によっては太いツノを持って産まれます。
影響は?
人間に攻撃することはありませんが、本来であれば「か弱い」はずのアブラムシが、攻撃性を備えているのは大変珍しいことです。
この種類のアブラムシは、通常個体も兵隊アブラムシも同じ母虫が産みますので、同じ遺伝子にも関わらず、兄弟でありながらまるで「違う種類の幼虫」のように見えます。
なお兵隊アブラムシは攻撃専門ですので、幼虫を産むことができません。
成長も途中で止まる、不思議な体質です。
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アブラムシの「生態」を知ろう!
ここからは、アブラムシのことをもっと理解するために、生態について分かりやすく説明していきます。
生まれる固体は4種類ある!
アブラムシは同じ種類であっても、季節によって次の4つのタイプに分かれて生まれてきます。
交尾をせず単為生殖できる個体です。
これは「卵を生む」のではなく、生まれたときから体内に幼虫を持っており、「自分と同じ遺伝子のクローン」を生み出しています。
羽の有るものと無いものがいます。
後で紹介する、「幹母」と呼ばれるアブラムシから生まれます。
胎生メスから生まれます。
オスと交尾をして卵を産む個体です。
羽はなく、秋に出現する種類となります。
胎生メスから生まれます。
羽があり、卵生メスと交尾することができる個体です。
メスと同様に秋に出現する種類となります。
「卵生メス」と「オス」の間で生まれた卵からのみ生まれます。
大きい体で「ダニのような丸い腹部」を持つ個体です。
越冬後に生まれる個体であり、初夏に「胎生メス」を産むことができます。羽はありません。
胎生メスを産むと、小さな胎生メスが幹母の周囲に「コロニー」をつくる様子が見られます。
どんなライフサイクルを送るの?
アブラムシは昆虫の中でも特殊なライフサイクルで活動しています。
春
越冬した卵から、上で紹介した「幹母」が生まれます。
初夏
幹母が「胎生メス」を産みます。
そして、胎生メス自身も、入れ子式に同じ胎生メス個体を産み続けます。(自らのクローンを作り続ける)
そして葉の裏などにコロニーを形成します。
夏
アブラムシの苦手な時期です。
植物の養分が一時的に少なくなるため、小型化するか夏眠をして省エネスタイルで越夏します。
晩夏〜秋
羽のある個体が生まれる時期です。
晩秋
胎生メスが、「羽のあるオス」や「卵生メス」を産み、それらが交尾をして産卵を行います。
冬
産卵が行なわれ、多くの種類が卵の状態で越冬します。
しかし暖かい地域では、成虫のまま越冬する場合もあります。
個体の種類とライフサイクルをまとめると…
卵から幹母が生まれる(すべて幹母)
↓
幹母から胎生メスが生まれる(すべて胎生メスです)
↓
胎生メスが、
- 入れ子式で胎生メスを生む
- 秋になると突然オスを生む
- 秋が近くなると卵生メスを生む
- 兵隊アブラムシを生む(種類による)
↓
オスと卵生メスが交尾して、産卵する
↓
卵で越冬
↓
最初へ
続いては、
産卵についてもう少し詳しく説明しましょう。
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アブラムシの産卵場所や数、卵の役割!
アブラムシは冬に産卵を行いますが、すべての種類ではありません。
産卵によって世代交代を行う有性世代のメスだけが交尾をおこなって産卵することができます。
産卵場所と卵の数!
卵は樹皮の隙間や木の幹の中などに産み付けられます。
中には「様々な場所でバラバラとばら撒いて産卵する種類」もいますので、実に様々です。
一匹あたりの生涯産卵数は100個前後とされますが、種類によっても差があります。
卵の役割!
卵は丈夫な殻に守られていますので、そのまま越冬することができます。
しかし日本では南下するほど気温が高くなるため、産卵をする種類が南へ行くほど減り、気温の高い地域では成虫のまま越冬を行います。
このため、寒い地域だからこそ「卵」という形で越冬を行うと言えます。
※寒い地域では、成虫は死んでしまうため、卵を残して越冬させる手法を取ります
なお駆除薬剤への耐性はあまりなく、卵にも成虫と同じように駆除剤の効果はあります。
ただし水で弾き飛ばしてしまうと、そのまま落ちた先で孵化してしまう可能性がありますので、駆除の際は薬剤を使用しましょう。
アブラムシの幼虫ってどんなの?
卵から孵化する個体は、「幹母」と呼ばれる大きな個体です。
幹母が「胎生メス」を産み、生まれたメスの幼虫は10日程度で成虫となります。
そして自分と同じメス個体を、毎日5匹程度産むようになります。
なお、胎生メス個体が「生涯に産む幼虫の数」は、1か月程度の寿命であるにも関わらず、90匹以上も産むことができます。
【以下、幼虫の例】
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アブラムシの「成虫」について!
続いては、普段目にする「成虫」について説明します。
身体の色!
様々な色や形をしています。
バッタが緑色と茶色に体色を変えるように、アブラムシも体色の違う個体がたくさんいます。
これは「リケッチャ属の細菌に感染しているか否か」が関わっており、感染していれば薄い桃色に変化し、それ以外が黄色〜緑色となります。
また「アブラムシの種類」でも紹介したとおり、種類によって真っ黒の個体もいれば、透明感のある淡い黄色の個体も現れます。
羽の有無!
成虫には
- 羽のあるタイプ
- 羽のないタイプ
の個体がいます。
これらは同じ種類のアブラムシであっても、「ライフサイクルのどの部分で生まれたか?」で違う形となります。
ライフサイクルは上記の「どんなライフサイクルを送るの?」で説明しています。
羽のあるタイプは遠くまで移動できることから、繁殖に適した場所を開拓することができます。
人の育てる植物を探しだして、移動してくるのも羽のあるタイプです。
そして羽のないタイプは移動はできませんが、集団でコロニーを形成し、効率良く繁殖を行います。
一つのコロニーに「羽のあるタイプ」と「羽の無いタイプ」が集まっている場合も多くみられ、まったく違う体形であっても、同じ種類であることが分かります。
成虫の活動場所!
成虫は「植物の汁」を吸ってエサとしています。
特に柔らかい新芽やつぼみが大好きで、群れをなして集まります。
植物の「やわらかい部分」にコロニーを形成し、茎や葉の裏などにくっついて汁液を吸っています。
伸び盛りの枝にも好んでついてしまうため、アブラムシ対策に枝を落とす場合もあります。
種類によって好みが異なりますが、ほとんどの
- 草
- 花
- 果樹などの樹木
- 観葉植物
に悪影響を及ぼします。
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アブラムシが「繁殖力が強い」のはなぜ?!
アブラムシは繁殖力が強く、短期間で劇的に数を増やしてしまいます。
そこには、ここまで説明してきたとおり「胎生メス」が関係しています。
胎生メスは、生まれたときにすでに次世代の幼虫を抱えています。
そのため、「繁殖の際はそれらを放出するだけ」という “入れ子構造” となっています。
変態を必要としないため、短期間で成虫となり「効率的なライフサイクル」を送ることができます。
これらの特徴が、他の昆虫にはない「アブラムシだけの繁殖力の秘密」と言えるでしょう。
なお卵から生まれる固体に関しては、先に挙げたように「ライフサイクルにおけるタイミングの違い」によって、
- 胎生メス
- 卵生メス
- オス
- 幹母
の4タイプのどれかに生まれます。
同じ種類であっても目的に応じてまったく違った体型で生まれ、季節ごとにそれぞれの役割を果たして死んでいきます。
「病気を媒介する」ので注意せよ!
上でもサラッと説明しましたが、アブラムシは「植物の病気」を媒介します。
その一つが「すす病」です。
すす病とは、糸状菌でカビの一種である「すす病菌」が、葉に広がって増殖することで発症します。
野菜や果樹などどんな植物にも見られ、葉の表面に現れた黒い斑点が、「だんだんと輪を広げるように大きくなっていく症状」が見られます。
この黒い部分は「皮膜」のように葉の表面を覆ってしまうため、光を通しにくくなり光合成がうまくできず、植物は栄養不足になってしまいます。
葉からの蒸散もできなくなりますので、果樹であれば果物の生育にも大きく関わります。
野菜類は収穫できない事態となり、最悪の場合は株が弱り、枯れてしまうこともあります。
原因は?
すす病の原因は、すす病菌が好む害虫の排泄物です。
これはアブラムシだけでなく、
- ハダニ
- カイガラムシ
といった複数の害虫が原因となります。
植物の栄養を「すす病菌」が吸い取って枯らすわけではないのですが、それでも黒い皮膜状の症状が増殖するれば、植物に大きなダメージを与えます。
害虫は一匹一匹はとても弱い生き物ですが、このようなカビ類の媒介をすることで、とても厄介な存在となっています。
アブラムシを見つけたら、とにかくスピード勝負となりますので、迅速に薬剤などを用いて駆除を行いましょう。
さいごに!
アブラムシの種類と生態についてまとめてみました。
アブラムシは「繁殖力」と「植物への害」が強いため、見つけ次第早めに駆除、そして予防することが大切となります。
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