シロナガスクジラは地球上最大か?大きさや寿命・天敵・生息地まとめ
巨大な身体を揺らしながら優雅に泳ぐ「シロナガスクジラ」。
「地球上最大」とも言われますが、本当でしょうか?
このページを読むことで、
- どれくらいの大きさや体重なのか?
- 寿命がどれくらいなのか?
- どのような天敵がいるのか?
- 海水を飲まずにどうやって食べているのか?
などが分かります。
わかりやすく説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- シロナガスクジラってどんな生き物なの?
- 大きさと体重は地球上No.1!
- 寿命は最大120年!
- 天敵は2ついるが、実はクジラ自体が天敵かも!
- 生息地は決まっていない!
- こんなに大きいのに餌はプランクトン?!
- 鳴き声の大きさも地球上で一番デカイ?!
- どうやって寝てるの?
シロナガスクジラってどんな生き物なの?
シロナガスクジラは
鯨偶蹄目 ナガスクジラ科 ナガスクジラ属
に属するヒゲクジラの一種。
この名前は、「長い体が水面に浮かび上がる際に白く見える」ことから名づけられました。
英語圏ではシロナガスクジラのことをブルーホエール、またはサルファボトム(硫黄色のお腹)と呼んでいます。
クジラ科には2つの種類があり、歯を持っているかどうかで分類が決まります。
- ハクジラ
⇒マッコウクジラやイッカクなど歯を持つクジラのことで、ヒゲクジラよりも頭が小さく小柄
- ヒゲクジラ
⇒セミクジラやシロナガスクジラなど、歯の代わりに「髭(ヒゲ)」と呼ばれるブラシ様のろ過装置を持つクジラ
シロナガスクジラの顎には軟骨しか存在しないため、直径10m近くまで大きく口を開けることができます。
また、のどの表面には60本程度の畝(うね)があり、これを広げてのど袋を作ることで一度に大量のエサを捕食します。
畝(うね)とは、クジラの腹部にもみられる盛り上がった筋のことで、ヒゲクジラ科特有の形態です。
大きさと体重は地球上No.1!
シロナガスクジラの大きさは
- 体長20〜30m
- 体重80〜190トン
であり、過去に存在していたであろう巨大生物「恐竜」でさえも、シロナガスクジラの大きさには到底届きません。
シロナガスクジラはクジラ科でもっとも大きいだけではなく、すべての生き物のなかでも一番大きな動物です。
体長はメスが大きいが、体重はオスが重い!
シロナガスクジラはオスよりメスのほうがやや大きいことが多く、記録では体長34mもの大きなメスが存在したとされています。
ただし通常30mを超える個体は非常にまれで、さすがのシロナガスクジラでもそこまで大きくなるものはほとんどいません。
特に北太平洋や南半球を主な生息地とする個体は26m未満と小柄なため、生物学的には亜種(原種から生まれた別の種類)として分類されています。
ちなみにシロナガスクジラの体重は、同じ体長のオスとメスで比べるとオスのほうが重くなります。
なぜならシロナガスクジラのオスはメスよりも骨太で筋肉が多いため、たとえ同じ大きさでも体重に差が出るのです。
こうした性別による違いは多くの生き物にみられ、人間や犬、猫や鳥なども同じようにオスのほうが筋肉量が多い傾向があります。
シロナガスクジラの寿命!
シロナガスクジラは80〜120年も生きる動物で、クジラ科のなかでは比較的長寿な部類に入ります。
成体のシロナガスクジラには天敵がとても少なく、かつ遺伝的な疾患やかかりやすい感染症などもありません。
そのため、主な死因である「台風の影響による座礁や船舶との衝突」を避けることができれば、天寿をまっとうできるでしょう。
ちなみにクジラ科のなかでもっとも長生きするといわれているのは、北極海に生息する「ホッキョククジラ」です。
【ホッキョククジラ】
ホッキョククジラは全長18〜21mとシロナガスクジラよりも小柄でありながら、平均150〜200年もの寿命を誇ります。
シロナガスクジラ同様、ホッキョククジラも捕鯨によって個体数が激減しており、現在の個体数は約1万頭といわれています。
シロナガスクジラに天敵は2ついる!
シロナガスクジラは成体になると体長20〜30mもの大きさになるため、天敵はほとんどいません。
群れを作らず単独で生活するシロナガスクジラにとって、硬い体と大きな尾ひれは立派な武器といえるでしょう。
しかしそんな無敵に思えるシロナガスクジラにも、実は天敵の動物が2つ存在します。
海の王者ともいわれるシャチは、「生まれて間もない子どものシロナガスクジラ」を襲います。
シャチは「機動性のある体」と「高い知能」を持っており、その狩りの高度さから生態系のトップに君臨している海洋生物です。
一般的に自分より体の大きいものを狙う生物は少ないのですが、シャチはたとえ相手が大型であっても躊躇なく襲います。
親子のシロナガスクジラを見つけたシャチは数十頭の群れで近づき、仲間と連携して子どもから親を引き離すように泳ぎます。
そしてこどもと親が離れたところでこどもの上に乗り、長時間にわたって息継ぎを妨害し続けることで窒息死させるのです。
シャチの潜水時間は15分ほどとシロナガスクジラの1/3しかありませんが、仲間同士で代わるがわる乗れば問題はありません。
そのため、たとえシロナガスクジラのこどもであっても、しつこく付け狙われれば逃げるのは難しいといえるでしょう。
シロナガスクジラは「絶滅危惧種」として認定されています。
そしてその原因は、まぎれもなくわたしたち人間です。
捕鯨自体は縄文時代から行われていましたが、シロナガスクジラのような超大型種を捕まえるようになったのは19世紀以降です。
なぜなら当時の捕鯨方法は「沿岸付近にやってきたクジラを浜辺へ誘導して座礁させる」という、小型種に対するものが一般的だったからです。
そのため、シロナガスクジラは小型のクジラ科にくらべて捕鯨され始めるのが遅く、数が減るまでに時間がかかったとされています。
ですがその後、
- 爆発モリ(槍のようなもの)
- 高性能な捕鯨船
が開発されるようになったことで大型種の捕鯨が可能になり、シロナガスクジラの数は徐々に減っていきました。
【爆発モリ】
もともと生息していたシロナガスクジラのうち9割以上は、1940〜1960年代の間に人間の手によって命を落としたのです。
自然界ではほとんど敵なしのシロナガスクジラですが、今もなお絶滅の危機にさらされているのは、わたしたち人間が原因といえるでしょう。
「天敵」とは言えないかもしれませんが、マッコウクジラは、「成体のシロナガスクジラ」に唯一対抗できるといわれている動物です。
ですが、「実際にマッコウクジラがシロナガスクジラを襲った記録」が過去にあるわけではありません。
マッコウクジラの大きさは
- 体長12〜18m
- 体重25〜60トン
とシロナガスクジラよりは小さく、主に千島列島や知床半島の深海2000m付近に生息しています。
マッコウクジラには歯がある
「マッコウクジラがシロナガスクジラに対抗できる」といわれている理由は、マッコウクジラが歯クジラだからです。
マッコウクジラの主食は体長3〜4mもある大王イカであり、口には「獲物を引き裂くための鋭利な歯」を持っています。
それに対し、ヒゲクジラ科であるシロナガスクジラには歯がなく、万が一マッコウクジラに襲われた場合には対抗する術がありません。
そのため、「歯のあるマッコウクジラであれば、シロナガスクジラに対抗できる」「天敵になる」などといわれているのです。
マッコウクジラは集団生活する
シロナガスクジラと違い、マッコウクジラは集団で生活するため、狩りは群れの仲間同士で協力して行います。
世界最大のクジラであるシロナガスクジラとはいえ、歯のあるマッコウクジラに群れで襲われたら確かに苦戦するのかもしれません。
これらの理由で、我々人間の目の届いていな場所で実際に天敵となって攻撃を仕掛けている可能性があるのではと言われているのです。
シロナガスクジラの生息地は決まっていない!
シロナガスクジラは全海域に生息しており、季節に合わせて回遊しています。
つまり「シロナガスクジラには決まった生息地が存在せず、水温によって世界中の海を移動している」ということです。
- 夏:水温の低い北極海・南極海
- 冬:水温の温かい熱帯や亜熱帯
以前は30万頭いたシロナガスクジラですが、捕鯨によって一時は700頭まで激減してしまいました。
そのため、シロナガスクジラは「絶滅危惧種」に指定されるようになり、現在でも1万頭ほどしか存在しません。
捕鯨禁止令が作られたおかげで徐々に個体数は増えてきていますが、当時を考えると未だ足りないといえるでしょう。
餌はなんとプランクトン!
シロナガスクジラのエサは、主にオキアミという小型甲殻類(プランクトン)です。
シロナガスクジラは「水中で威嚇するように泳ぐことでオキアミを警戒させ、集団で集まったところを一気に飲み込む」という方法で食事をします。
口に入ったオキアミは、上あごにある板状の繊維「鯨ひげ」でこしとられ、海水は口の端から外へと押し出されます。
魚から水分を摂ることも!
基本的には「オキアミ」を主食とするシロナガスクジラですが、時にはアジやイワシなどを食べることもあります。
魚はオキアミと違って泳ぎが速いため、群れ全体を翻弄するように泳ぐなど何らかの工夫をしなければ捕まえることができません。
そのため、アジやイワシなどの群れを狙ったシロナガスクジラは、上下逆向きで泳いだり、複雑な動きをしながら少しずつ近づいていきます。
ちなみにシロナガスクジラのように水中で生活している哺乳類は、人間と同じように海水を飲むことはできません。
なぜなら海水はすべての哺乳類にとって塩分濃度が高すぎるため、そのまま飲むと腎臓に問題が起こる可能性が高いからです。
そのためシロナガスクジラは、「体に蓄えた大量の脂肪や油などを体内で分解する」ことによって水分を得ています。
また、エサとしてまるごと飲み込んだアジやイワシなどの魚を胃で消化することで、水分を摂取することもできます。
水分はそれほど必要ない
そもそもクジラやイルカなど水中で暮らす生き物には汗腺が存在しないため、汗をかくことで水分を失うことはありません。
そのためシロナガスクジラは、「陸上で生活する生き物のようにたくさんの水分を日常的に摂取する必要がない」といえます。
鳴き声の大きさも地球上で一番デカイ?!
シロナガスクジラは、動物の中で「もっとも大きな鳴き声をあげる動物」として知られています。
シロナガスクジラの鳴き声は155〜180デシベルとされており、主に仲間同士でコミュニケーションを取る際に使われます。
救急車のサイレンの音量は80デジベル程度、飛行機の爆音であっても120デジベル程度ということを考えると、圧倒的に大きい音ですね。
シロナガスクジラの鳴き声は150q以上先まで届くといわれ、低周波であれば800q先でも観測することができます。
【クジラの鳴き声】
シロナガスクジラはどうやって寝てるの?
動物の脳には左脳と右脳がありますが、シロナガスクジラはどちらか一方を眠らせた状態で活動することができます。
つまり、片方の脳が寝ている時でも一方を起こした状態でいられるため、泳ぎながら睡眠をとることができるのです。
こうした睡眠のとり方は「半球睡眠」と呼ばれており、
- イルカなどの海獣
- 一部の鳥類
もシロナガスクジラと同じ方法で眠ります。
また、熟睡中のシロナガスクジラはまるで人が立っているような姿勢でいることが多く、頭を上にしてユラユラ揺れながら寝ています。
哺乳類の海洋生物は「定期的に水面から顔を出して呼吸する」必要がありますが、立位で眠っていれば少し上に動くだけで息継ぎができるのです。
ちなみに、シロナガスクジラの睡眠時間は数秒から数十分程度と非常に短いため、人間のように何時間も眠ることはありません。
まとめ!
シロナガスクジラについて説明しました。
さいごにカンタンにまとめてみましょう。
- 地球上でもっとも大きい生物である
- メスの方が身体が大きいが、同じ大きさではオスの方が重い
- 世界中の海に生息している(季節によって回遊している)
- 80〜120年生きる生物である
- 天敵はシャチと人間
- 鳴き声も全生物の中で最も大きい
- 右脳と左脳を交互に休めるため、泳ぎながら眠れる
以上、参考になりましたら幸いです!